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ADHD
(注意欠陥多動性障害: Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

ADHDとは

 過度に集中してしまったり、ボーッとしたりあれこれ気になるなどして注意の切り替えが難しく(『不注意』)、ジッとしていられない、思いついたら先を予想せずにすぐ動く(『多動性・衝動性』)といった特性から、日常生活に支障が出る事があります。

人は誰でも、集中できなかったり、そわそわすることはあるので、健常なのか障害なのかの見極めはとても難しいです。また、例え特性があったとしても、日常生活で困っておられなければ問題はありません。

 しかし、同じ年の人たちや同じ知的理解力の人たちと比べて特性が強く出ていて、色々な生活場面で出現し、学校や職場、家庭で生活上問題となるレベルとなった場合には、診断やサポートが必要となります。

子どもでは100人に5人、大人では100人に2.5人の発症率で、男性に多いです。幼児期から特徴は見られますが、大人になるまで気づかれないこともあります。性格として理解され、治療に結びついていない人もたくさんいます。最近では、発達障害は病気や症状というよりも特性であり、特性に合わせた対応が大切であると言われています。

原因

 脳の中の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの動きが悪いとされています。また、集中する、行動を計画して動くといった機能を司る前頭葉機能の問題もあるとされています。長期的に目的を持って行動することが苦手(脳の報酬系の障害)であるということも研究でわかっています。

 大昔はご家族の育て方の問題だと言われていた事もありますが、現在では否定されています。

主な特性

 『不注意』と『多動性・衝動性』が特徴的です。刺激を求めやすく、新しいことに興味を持ちやすく、好奇心旺盛ですが、同じことの繰り返しをやり続けることが苦手だったり、気が進まないことに手を付けることが苦手です。また、危険や先のことをじっくり考えずに動くので、普通の人よりも事故にあいやすいことが海外の研究調査でわかっています。 小学校高学年頃から特に目立ちますが大人になるまで気づかれず、職場などで指摘されてわかることもあります。

『不注意』は、注意できる範囲が少ないということです。そのため、一つのことに集中しすぎて他が疎かになったり、ボーッとして気づかなかったり、あれこれ気になってしまい物事に取り組めない、覚えていない、思い出しにくいなど様々な形で起こります。

 小さい頃の行動特性としては、気が散りやすく忘れっぽい、先生の話を最後まで聞いたり、指示通り行動ができない、宿題や課題を終わることができない、整理整頓が出来ない、すぐ物を失くしたり、置き忘れがあるなどで見られます。大人の行動特性としては、仕事で集中がすぐに途切れる、書き間違いなどケアレスミスが多い、優先順位を決めて順序立てて行動することが苦手、整理整頓ができない、失くし物が多い、生活リズムが一定しない、大事な書類の期限を忘れるなどが見られます。

 『多動性』は、小さい頃の行動特性としては、過剰にしゃべりすぎる、身体をもじもじさせる、何にでもよじ登る、静かに遊べない、課題に取り組めない 、良く考えずに動く、などが見られます。通常10歳ごろより目立った多動は落ち着いてきます。大人の行動特性としては、過剰に喋る、頭の中が落ち着かない、仕事を過剰に引き受けてしまう、薬やアルコールへの依存(自分を落ち着かせるための工夫)、貧乏揺すり等目的のない動きが多い、などが見られます。

『衝動性』は、小さい頃の行動特性としては、あてられる前に問題に答える、順番が待てない 、他人に口を挟んだり邪魔をする、などが見られます。大人の行動特性としては、過刺激性、短気、転職が多い、思いつきで急に旅行に行く、事故にあいやすい、衝動買いが多い、危険なこと(薬物、セックス)に惹かれる、などが見られます。

 ADHDの中には、上記のような特徴に加えて、6ヶ月以上持続して、明らかに拒絶的で、反抗的で、挑戦的な態度や行動が見られることで、社会生活に支障をきたしている人もいます(反抗挑戦性障害)。

 上記のような困りごとがある事で、時に心身の不調につながることがあります。この特性によって、学校や会社などでストレスが募り、学校や仕事に行きたくないと感じたり、朝起きられない、学校や職場から帰った後に混乱することがあります。腹痛や頭痛など身体に症状が現れたり、気持ちが落ち込むなど気分の問題が出ることもあります。自分に自信を持ちにくくなる人もいます。

診断

 子どもであれば、小児科もしくは児童精神科、大人は精神科の詳しい先生への相談となります。診断にはご本人だけでなくご家族など小さい頃の状況を客観的に把握している方にもお伺いします。心理検査などをすることもあります。どの特性が強く出て、生活上困難が出現しているかは人によって違いますので、しっかりとお話を伺いながら、確認します。

12歳より前から不注意、多動性衝動性の特性のどちらかもしくは両方が少なくとも六ヶ月以上続いているかどうかが診断のポイントになります。小さい頃から特性はあっても、大人になるまで気づかれない事もよくあります。また、小さい頃困っていた事と大人で困っている事は変化している可能性があります。

 ADHD以外の発達障害(自閉症スペクトラムやLD)にも同時にかかっている(併存)している事があります。また、人によっては、元々のADHDには見られないような二次障害(気持ちが落ち込んだり、不安を感じやすいなど)が起こる事があります。

治療法

 同じADHDでも、特性の度合いも、生活上での困りごとも一人一人違います。まず主治医とよく話し合ったり、検査を受けて、ご自身の特性について理解を深める必要があります。生活上での支障を減らせるように、ご自身でどのような工夫ができるか、また周りの方にどのように協力していただけそうかを考えていきます。また、あくまでも「症状」ではなく「特性」であると捉え、その人ににあった対応方法を見つけ出す事がとても重要です。
 子どもの場合は、家庭や学校が特性を理解し、必要なサポートをしていただくことで、過ごしやすくなります。 

サポートの上では自尊心や自己肯定感を育む事がとても大切です。ストレートな言葉(例:「頑張ったね」「上手だね」など)で、努力した事そのものを褒めるようにしましょう。家族はもちろん、学校など周囲の人たちがチームを組んで、その子に合ったサポートの方法を見つけていくことも大切です。子どもの場合、本人に伝えるタイミングも重要です。思春期前後ごろ、周りとの違いに気づき始め、本人が知りたいと思っていて、かつ本人に伝える方が、メリットがあると考えられる時が、良いタイミングでしょう。診断名を伝えるというよりも、上手く日々を過ごすための対応につながるよう、特性や対処法を工夫して伝える必要があります。

当院の治療コンセプト

 当院ではADHDの診断をすることはできません。また、コンサータの処方はできません。専門機関での診断後であれば、ご自身の望まれる形で気分の落ち込みや不安、体の症状に対しての治療を行います。日常生活のお困りごとへのご相談に対してサポートをすることは可能です。たとえば、ADHDの方は次々に手を出してたくさんのことを抱えすぎたり、集中しすぎて、睡眠不足になったり疲れすぎることがあります。場合によってはコンサータ以外のADHDに対する薬物療法を施行することがあります。

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