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自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラムとは

 一般的な育児書にあるような発達の目安には合わず、目安より早く育つ部分もあれば、遅い部分もあります。例え特性があったとしても、日常生活で困っておられなければ問題はありません。しかし、特性がとても強く出ていて、学校や職場、家庭で生活上問題となるレベルとなった場合には、診断やサポートが必要になります。
 最近では、発達障害は病気や症状というよりも特性であり、特性に合わせた対応が大切であると言われています。
女性より男性の方が数倍多いとされています。小さい頃からの特性ですが、成人してから発見されるケースも増えています。約100人に1−2人の割合だという研究があります。

原因

 原因はまだ特定されていません。現在の研究では複数の遺伝的な要因が関わり合って起こる、生まれつきの脳の機能障害が有力だと考えられています。胎内の環境や周産期のトラブルが関係しているかもしれないとも言われていますがはっきりしていません。
かつては、ご家族の愛情不足と言われていた事がありますが、全く関係ありません。

主な特性

得意なことと、そうでない事の差がとても大きいです。通常は、歩くなどの運動面の発達では大きな遅れが見られません。また、視覚的な情報処理が得意な人が多く、興味のあることに対する知識、場所、物の場所の記憶がとても優れている事があります。
 一方で、対人コミュニケーションの質のかたより、興味のある事へのこだわりや同じ動作を繰り返すといった特性があります。対人コミュニケーションにおいては、人の気持ちを直感的に読みとる事に弱さがあります。私たちは他者と話す時には、自然に言葉のメッセージと、身振りや手振り、目の動きなど言葉以外のメッセージの両方を読み取って会話をすすめています。しかし、自閉症スペクトラムの人は言葉通りに物事を受け止めやすく、言葉以外のメッセージを理解しにくいので、コミュニケーションがずれてしまう事があります。また、特定の物事に強く興味を持って、マイペースに行動するため、興味のある事だけ膨大な知識がある、同じ手順で繰り返すことにこだわったり、同じ動作を何度も繰り返す事があります。
 生まれてから2歳頃までは歩くなど、運動の発達に大きな遅れはありません。しかし、言葉の発達は少し遅れる事があります。また、言葉ではないコミュニケーションの面での特性が見られます。1歳~1歳半頃から、人が興味を持っていることに興味を示さない、自分の興味があることを他者と共有しようとしないといった特性が見られるようになります。具体的には指差しがない、視線が合わない、不安になっても親の方を見ないといった行動が見られます。
 2歳以降は、視線や表情、身振りなどの言葉以外のコミュニケーションの読み取りの問題が明確になります。3−4歳ごろに診断される事が最も多いです。誰かに名前を呼ばれても振り返らなかったり、同い年の子どもさんに自分から関わろうとしなかったり、関わったとしても、相手の反応を見ず一方的に話し続けてしまうなどの行動が見られます。また、相手の言葉をそのままオウム返しにする、手をひらひらさせるなど同じ行動をし続ける、順番や物の配置にこだわる、記号(数字・文字・天気図など)に興味を示し全て覚えるといった特徴も見られます。
 4~6歳ごろは、少ない人数であればコミュニケーションが可能となることもあります。しかし、集団活動になると、状況によって臨機応変に行動や対応を変えられずストレスを感じることがあります。
 6歳以降の学校生活でも、社会に出てからも特徴そのものは大きく変わりません。しかし家から、社会に生活が広がることで、色々とやりにくさを感じる人も多くいます。感覚の過敏さがある人は、特定の音、光、においなどがとても辛い事があります。また、たくさんの人とコミュニケーションをとる必要がありますが、周囲の人との距離感が掴みにくく、どのように振舞えばいいのかわからず、困ってしまう事があります。いじめられたりすることもよくあります。

生活上のやりづらさが続くと心身の不調につながることがあります。学校や仕事に行きたくないと感じたり、気持ちが落ち込む、学校から帰った後に混乱するといったことが起きる人がいます。腹痛や頭痛など身体に症状が現れるなどの症状が出ることもあります。うまくいかなさを感じつづけることで、自分に自信を持ちにくくなる人も多くいます。

 

 上記の特性が幼少期から認められるものの、周囲のサポートや理解などがあり、特性が困りごととして認識されていない場合もあります。ところが会社への入社、転職、部署変更など、本人を理解してくれていない新しい集団での柔軟な対応や協力、実践場面での臨機応変さを求められた折に、困りごととして自覚されます。社会でのやりにくさを強く感じ、気持ちの落ち込みや不安感などを主訴として受診され、困りごとの背後に自閉症スペクトラムを疑われることもあります。

診断

 子どもであれば、小児科もしくは児童精神科、大人は精神科の専門機関での診断となります。診断にはご本人だけでなく、ご家族など小さい頃の状況を客観的に把握している方にもお伺いします。先述した対人関係やコミュニケーションの困難さ、興味がとても偏っていて熱中しやすい、同じ行動を繰り返したりするといった特性が遅くても3歳までに出現しているか確認します。また、特性によって現在、生活でどの程度困っているかを確認します。
 自閉症スペクトラム障害以外の発達障害(ADHDやLD)も同時に診断される事があります。また、自閉症スペクトラム障害に加えて、うつ病、不安障害、不眠症、心身症などが診断される事があります。

治療法

同じ自閉症スペクトラムでも、特性の度合いも、生活上での困りごとも一人一人違います。まず主治医とよく話し合ったり、検査を受けて、ご自身の特性について、ご自身の理解を深める必要があります。生活上での支障を減らせるように、ご自身でどのような工夫ができるか、また周りの方にどのように協力していただけそうかを考えていきます。あくまでも症状ではなく違いであると捉え、その人にあった対応方法を見つけ出す事がとても重要です。
 子どもの場合は、ご家庭や学校が特性を理解し、必要なサポートをしていただくことで、過ごしやすくなります。 

大人も子どもも、自尊心や自己肯定感を育む事がとても大切です。サポート側は、ストレートな言葉(例:「頑張ったね」「上手だね」など)で、努力した事そのものを褒めるようにしましょう。家族はもちろん、周囲の人たちがチームを組んで、その方の個性や、特性に合ったサポートの方法を見つけていくことも大切です。

 現時点では自閉スペクトラム症を根本的に治す薬や方法はありません。しかし、先述したような、二次障害に対しては投薬治療をする事があります。

当院の治療コンセプト

当院では現時点では自閉症スペクトラムの診断をすることはできません。専門機関での診断後であれば、ご自身が望まれる形で、気分の落ち込みや不安、体の症状に対しての治療や、日常生活の困りごとへのご相談に対して、サポートをする事は可能です。生活の困難さから共に学び、次に生かせるよう対応法を一緒に検討していく事で、以前より生活しやすくなることを目指します。

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