​統合失調症

​統合失調症とは

はっきりした原因は不明です。体質面では、脳の中の神経伝達物質の『ドパミン』が過剰に分泌されすぎることが影響しているとされています。体質面に心理的、環境的なストレスが重なり、病気を発症するのではと考えられています。

発症率は120人に1人と、けして珍しい病気ではありません。発症年齢は10代後半~45歳と言われています。比較的お若い頃(10代から30代)に発症する人が多いです。男女差では1.4:1と男性の方が多いです。また、男性の方が、女性より若い時期に発症することがわかっています。発症の頻度は、今も昔も変わっておらず、日本でも他国でも大きく変わりません。

昔と比べて治療法が良くなってきており、病気にかかっても、若いうちに早期に病気を発見し、治療をはじめることが、その後の生活全体に良い影響があることが研究でわかっています(Birchwood M, Todd P, Jackson C:Early intervention in psychosis. The critical period hypothesis. Br J Psychiatry Suppl 1998;172:53-9)。
ただし、再発率も高く、長い期間付き合っていく必要があります。

【分かり易く知りたい方は】

主な症状と症状のうつりかわり

症状は大きく分けると『陽性症状』と『陰性症状』に分かれます。症状のせいで記憶力や集中力、理解力がとても落ちます。すべての症状がひとりの患者さんに出てくるわけではなく、どの症状が強く出るかは人によって違います。また病気の時期によって強く出る症状が変わることもあります。 

『陽性症状』は、幻覚や妄想のことです。実際には誰も言っていない自分への批判、否定的な言葉が聴こえることがあります。また、実際にないものが見えることがあります。実際にはされていないのに、誰かに嫌がらせされたり、監視されているなど、普通の人には理解できないような思い込みをすることもあります。いずれの症状も、とても鮮明に、リアルに感じられます。

『陰性症状』は、身だしなみなどへの関心が低くなり、喜怒哀楽の感情がおこりにくくなる、視線を合わせて話したり、言葉に抑揚がなくなる、意欲が出ずに引きこもるなどがあります。周囲の人が、『症状』と理解することが難しく、「社会性や常識がない」「怠けもの」といった誤解を招きやすい面がおありです。

『陽性症状』と『陰性症状』のほかには、会話がまとまりなく、たびたび脱線してしまい、支離滅裂になるのでコミュニケーションにならない、指示に逆らい聞き分けのない子どものような振る舞いをする、変な体勢でずっといる、意味のない動きを延々と繰り返す、おうむ返しする、何も話さなくなる、などの症状が出ることもあります。

症状は、『急性期』「『消耗期』『回復期』と移り変わっていきます。

『急性期』は上述した『陽性症状』が強く出現する時期です。数週間から数ヶ月続きます。興奮や腹が立つことが多く、落ち着きなく動きまわったりします。そのため、知らず知らず心身のエネルギーをかなり使ってしまいますが自覚がない時期です。時には入院が必要なこともあります。患者さんご本人も、まわりの人もなにがなんだかわからなく混乱、困惑する時期です。

『消耗期』は激しい症状は落ち着きます。しかし、『急性期』に心身のエネルギーを使いすぎているため、くたくたになり、元気が全くなくなります。自覚症状としては強いだるさ、過度な眠気、やる気のなさなどとして現れます。数ヶ月ほど続きます。心身を回復させるためにゆっくりと休むことが重要です。先ほどご説明した『陰性症状』が強く出現することがあります。「甘えや気の持ちようでどうにもならないほど疲れている状況」だと、まわりの方に理解していただく必要があります。

『回復期』は気持ちにゆとりが出てきて、周りにも目が向くようになります。やりたいことも出てきます。しかし、回復のスピードは非常に緩やかです。「気持ちはあるのに動けない」とがっかりしたり、まわりの期待がプレッシャーになる時期でもあります。数年から数十年続くことがあります。今できていることに目を向けて、無理のないペースでゆっくりと進んでいくことが大切です。再発にも注意が必要です。『消耗期』同様、『陰性症状』が出現しやすいですが、人によっては『陽性症状』がなかなか消えず、長く続くこともあります。
 

 最近の研究では統合失調症が発症する前の症状(前駆症状)として、不安、強い緊張、今までと性格が変わる、眠れない、とてもだるいなどの症状が出ることがあることがわかっています。

診断(統合失調症スペクトラム)

現在の診断においては『統合失調症(上記の症状が2つ以上6ヶ月以上持続)』と、それに似たような症状がある障害である、『統合失調様感情障害(上記の症状が2つ以上1ヶ月以上6ヶ月未満で回復)』、『短期精神病性障害(上記の症状が1つ以上あるが1ヶ月以内に回復)』、『妄想性障害(妄想が顕著で他は目立たない)』、『統合失調型パーソナリティ障害(特徴はあるが日常生活には支障がない程度)』をひとつの連続体(スペクトラム)と考えています。

主治医は、患者さんやご家族のお話を聴きながら、先ほどご説明した症状の有無、強度、持続期間などによってどの診断になるかを検討します。

治療法

ご自身にあったお薬を主治医と相談しながら探します。あうお薬が見つかったら、病状に合わせて、継続した服用を開始します。お薬は、『抗精神病薬』(脳の中の神経伝達物質であるドパミンの過剰な動きを抑えます。幻覚や妄想などの症状をコントロールすることができます。近年お薬の開発がかなり進み、以前よりも「抑え付けられるような感じでずっと寝ていないといけないほどしんどい」、「手が震える」、「足がムズムズしてじっとしていられない」、「体が動きにくくなる」、などの副作用が少ないお薬がたくさんあります。)や、強い不安や不眠に対し、『抗不安薬』、『睡眠薬』などを使い、症状を軽減させることがあります。また、調子が悪い時だけでなく、落ち着いた後もお薬を飲み続けることが、再発予防のために非常に重要です。

ご自身や周りの方が病気の知識を学ぶことも大切です。また、日常生活に注意して症状をコントロールしていくことも必要です。時期により大切なポイントは異なりますが、治療を通して、よく眠る・ストレスをためない・疲れる前に休むことが、重要です。

不安感や幻覚、妄想が強い場合(特に『急性期』)は、ご自身や周りの方を守るために、入院治療が必要なこともあります。症状が落ち着いたら、できるだけ早く退院し、通院で治療をしながら地域で生活できるように精神科医、看護師、精神保健福祉士らが連携しサポートを行なっています。

 

【ポイント】
患者さんは、「自分が病気」という認識がありません。幻視や幻聴などは、患者さんご本人にとってはすべて「本当のこと」と思えているからです。そのため、周囲の人が病気に気付くことが大切です。しかし、ご本人が症状によって体験している異常な世界の意味が周囲の人にはよくわからず、困ってしまわれることもよくあります。

患者さんご本人は、幻覚や妄想につかまっています。そのため、非常に強い不安感があり、とても緊張しています。患者さんによりますが、「命を狙われている」とか、「監視されている」といった、誰かに何かひどいことをされている被害的な妄想や、幻聴が聴こえている人が多いです。そのため、「外の世界には敵が多い」と考えやすい状況にあります。ご本人の訴えを否定すると、「この人も敵なんだ」と患者さんに、勘違いされることがあります。頭ごなしには否定せず、「今、とても不安である」辛さをしっかりねぎらいを示しましょう。ご本人の考えにはみなが納得できるような、しっかりした根拠があるのか確認する必要があります。根拠があいまいな場合には、妄想の可能性が高いといえます。

患者さんご本人が、受診を嫌がる場合がよくあります。無理強いは逆効果です。ご本人は、不眠や食欲低下などの体の不調についても困っておられることが多いです。「最近眠れてなかったり、食べれていないから体調が心配。病院に相談しよう」と声かけをし、受診につきそうことが効果的な場合があります。

当院の治療コンセプト

統合失調症の患者さんは、体調を崩したときに病状が悪化することが多いので、身体面にも着目します。漢方薬などを併用することがあります。

治療で症状が軽くなると、ご自身も周りの方も「普通の人と同じように生活したい(させたい)」という強い思いで焦ってしまうことがあります。現在の状況を誤って捉えたり、段階を踏まずに無理して頑張られる方が、いらっしゃいます。結果、疲れから病状の悪化が起こり、薬の量が増えたり、入院をしなければならなくなることがあります。また、比較的お若い時期から病気と戦っている人が多く、生活面や対人関係でもストレスを多く抱えている人がいます。

そのような方は、デイケアや作業療法など、リハビリテーションを行なっている病院をご紹介することがあります。リハビリでは日常のリズムをつけ、小さな目標を決めてひとつずつこなしていくこと、社会で生きていく上で身の回りのことや、対人関係をスムーズに進めるための技術やコツを訓練し、社会復帰を目指すことができます。(当院にはリハビリ施設はございません)。